異能者の話。

伯方類(はかた るい)

サポートスキル:舞う言の葉

いわゆる言霊のようなもの。綴り、告げた言葉により、味方を鼓舞することも相手を陥れることもできる。発動時のデメリットはなく、目の色が変わるという変化のみ。ちなみに騙されやすい友人にカマをかけている際の目の色は通常の色だとか。


柏原皐(かしわら さつき)

特殊スキル:神の一振り

神器純金乱舞を振るうことで世界に混沌をもたらすことができる。が、それをすることで人間たちが困るのを知っているため敢えて隠し、通常の戦闘スキルに見せかけた体術で人の世に紛れている。発動時のデメリットは人との関わりを断つこと。


泊里悠(とまり ゆう)

戦闘スキル:雷神招来

雷様と縁を結び、自身の戦闘行為において常に雷撃の加護を得ることが可能。が、発動時のデメリットとして、金属類を身につけられない、使用後にしばらく静電気が酷い、などと使用前後に実生活に若干の影響を及ぼすのが特徴。


狛迫泉(こまさこ いずみ)

特殊スキル:結いの絆

「え?可愛い女の子の髪を綺麗にポニーテールにするスキルじゃなかったの?」違います。その手に宿った想いにより人と人とを繋げる特殊スキル。綺麗にポニーテールを結うことができるのはただの才能。発動時のデメリットは徐々に心を削っていることらしい。


絈山響(かせやま ひびき)

サポートスキル(?):甘い夢の中で

TRPGの精神分析的なスキル。心を癒すサポートスキルではあるのだが、使い方を変えれば戦闘スキルと言っても過言ではない。が、発動時のデメリットとして、自身も夢うつつの状態になるため戦場での使用は危険。隠密などで大活躍。


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閑静な森の中に騒がしい声が響いて、生き物たちが皆逃げていく。


「だぁ、もう、能力使った後近付くなって!」

「近付かないと治療できないだろ。」

「べっつに今すぐ治療しなくたって、いってぇ!?」

「はい、終わり。帰ろう。」

「やるならやるって言え、心構えっていうのがあるんだぞ!お前知らんかもしれないけど!」


満足したように歩き出す泊里悠に遅れて、悪態をつきながら伯方類も歩き出す。と、二人の通信機に仲間からの通信が入った。

ばちりと大きめの音がして悠は顔をしかめ、小型のイヤフォンを外してポケットに突っ込んだ。

ちらりと後ろに視線をやれば、細くしたジト目で睨む類とばっちり目が合った。

意思疎通が完了した、と解釈した悠は歩き出し、その背中に追いつかんばかりの勢いの声が張られる。


「お前何勝手に一人で納得してんだ、ちょっと待て、この帯電野郎!」

「ほら、近付かないから、な?」

「……ほんっと、そういうとこやぞ!」

『ねぇ、そろそろいい?』

「はいはい、お待たせしました、なんですか!」

『え、待って私キレられる筋合いなくないですか!?』

「察しろ!」

『無理だわ!』


ぎゃいぎゃいと通信機の向こう側に怒鳴りつけている類を半ば面白可笑しく見守りながら、悠は先ほどまで戦っていた異形に思いを馳せる。

7年前、突如世界を襲った未曽有の大災害で地球における人類はほぼ絶滅した。北米大陸に限らずハリケーンが襲い、ヨーロッパに限らず火山が噴火し、日本に限らず地震が発生し、ありとあらゆる自然災害が全ての地域で同時に起こった。一夜にして世界は地獄絵図と化した。

しかしその瓦礫の中から新たな生き物が目を覚ました。倒壊した家屋や襲い来る水の中でただ生きたいと願った人間と、それに呼応するように現れた何かしらの意思が融合したものが立ち上がった。

それはおおよそ人間の形をしておらず、気味の悪い怪物のようななりをして、街を闊歩し、生きたいという願いのままただ残った動植物を狩りつくそうとしていた。

そしてそれを留めるために、さらに何かがこの地球に訪れた。

死んだ肉体に力を与え、再び蘇らせる。それは確かに人の形をしていたが、扱う力は人間のそれを超えているものが多かった。自分よりも巨大な岩を軽々と持ち上げたり、在りし日の英雄を憑依させ戦ったり、雷を操ったり、自身の言葉に力を込めたり、と。

悠は未だにばちばちと電気を蓄えている自分の左手を見つめる。彼もまた大災害で無念の死を遂げ、何者かによって甦らされた一人であった。かつて電気や雷に関するものが好きだったことから与えられた能力なのか、扱いに困ることはなかったものの、未だに一度死んだときの感覚が忘れられない。

そしてそれを先ほど倒した異形は知らない。異形は死ぬ前に何かと融合した形である。それがどうにも奇妙で仕方がなかった。本来であれば一度死んだ自分たちこそ、あの異形のようになってもいいくらいなのに、と代わり映えのしなくなった左手を彼は見つめ続ける。


「……なんか分らんけど、左手を見て物思いに耽ってる。」

『ってことは、大丈夫、そう?』

「自分で考えろ。」

『こちとらそっちの状況が見えてるわけじゃないんだからちゃんと説明しろ!』

「頭使えって言ってんだよ!」

『もう十分使ったから許せ!』

「……なんともない。今から帰るから、ポータル開けて。」

『お前なぁ!』

「お前なぁ!」

「ふはっ、仲良し。」


細かいことを考えるのは自分の仕事じゃない、と割り切った悠はようやく地面を通して電気が抜けていくのを感じる。

やいのやいのと騒ぐ通信機を半ば諦めたかのように耳につけ、現状を報告、そして帰還に必要な作業を頼めば、当然通信機の向こうからと自分の耳に直接同じ言葉が飛んできて思わず笑ってしまった。


『えっとぉ、はいはい、できたできた、ポータル開けます。』

「もう絶対お前と討伐任務なんて行かないからな。」

「てか、なんで来たの?」

「なんか、上が行けって。」

「ふぅん。」

「とにかく、もう行かない。」

「……守れなくて、ごめん。」

「……!」

「俺がもっとちゃんと、守っていれば、怪我もしなかったのになって。」


目の前に現れた異空へとつながる靄に片足をいれながら、悠はつぶやく。その言葉を聞き取れないほど類の耳は落ちていない。というより、そういった感情の機微を捉えられるこそ与えられた能力だと、彼なりに分析している。悠がくよくよと考え悩む性格ではないことを知っているものの、類自身が弱いと判断したまま戻られるのが不本意に思った彼は悠の腕をぐっとつかんだ。


「おわ?」

「余計なお世話だばぁーか。ひざかっくん。」


一度、その膝をつかせて見たかった、と悠に近付き、右ひざ裏に念を込めれば、本人の意思とは異なりかくん、と膝が曲がりその体が地面に近付く。しかし咄嗟に左足を出したことにより、類の目論見を破った悠が振り返る。


「残念、だったな?」


その言葉に更に煽られた類がその後数分間、悠と口を利かなかった。そして報告書を書く際にどうしても必要な言質をもらうために悠が類に謝る姿が見られた。


「あの二人、なんだかんだ仲いいよね。」

「ほんとにねぇー。」

「ネタにされるのも納得というか。」

「皐が受け持ってたさっきの任務の通信も、そういう界隈に売れば高値が付きそう。」

「機密事項とかいう概念すっぽ抜けてて笑う。」

「もうあの二人の通信士やりたくない、うるさいし疲れる。」

「それは皐が類に遊ばれるのが嫌なだけでしょ?」

「遊ばれてませんー。」

「自覚がないのかぁー。」


資料室から出てきた泉、響、皐の三人がその様を見ていたのを彼ら二人が知る由もなかった。




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無理は通さず道理は通す。

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